歯の病気の治療と予防(ROC15) P-2もくじ][トップページ]

2003年6月28日、ラビットクリニックに於ける、ラビットオーナーズカンファレンス(ROC)に出席させていただいたので、講義内容をまとめました。ノート・デジカメ・ボイスレコーダー持参で聞いて参りました。長いページですが、ぜひご覧ください。

うさぎは歯が命ですよねー?歯の悪いうさぎを飼っている友人がいるので、食べられないことが、ほんとうにかわいそうです。P-2はなんとかまぬがれたいと、切実に感じ、気合いが入りました。

斉藤久美子先生、ありがとうございました。


講義内容は、背景を色分けしてみました。
切歯臼歯両方にわたるものはグレー、切歯は黄色、臼歯は緑の背景になっています。

うさぎの歯の特徴

・見えにくい (せいぜい前歯しか見えない)

・一生伸び続ける

一番伸びる上の前歯が1週間に2mm、下の前歯が1週間に1mm、奧歯が1ヶ月に1mm程度と思われる(資料はないが治療者としての経験上)
一生伸び続けるため、人間の歯以上に、歯茎にルーズに収まっている。

・犬歯がない

・切歯6本、臼歯22本

上の前歯は4本の重歯、下の前歯は2本。奥歯は上が左右6本×2で12本、下が左右5本×2で10本。小判型の舌隆起があるのがうさぎの舌の特徴。


奥歯なんて、アクビしてもよく解らない
うさぎはなぜこんな歯になった?

・食物と歯との整合性
・合目的進化

野生の状態でのエサに適合して進化、おいしいものをやれば喜ぶが歯のためには良くない。


うさぎの歯の病気

・切歯の異常

切歯の不正咬合による過長症

切歯の歯周病・・・歯茎に浮いているように生えているため、人間よりなりやすい。不正咬合なら、さらになりやすい。典型的なのは受け口、たまに左右にもずれる

・臼歯の異常

臼歯の不正咬合による過長症

顎を左右にしっかり動かさないといけないのだが、動かし方が足りないと、歯が尖ってくる。下の歯は舌に、上の歯は頬の内側を傷つける。

臼歯の歯周病

臼歯の過長症の症状

症状は急に出る。グサッとした瞬間から食べられなくなるため。

歯の尖りがグサッと傷つけるのは、食餌中は注意しているようなので、食べている時ではないだろう。走っていて急に止まったときや、飛び降りたときなどに、歯を食いしばった拍子に、グサッと傷つけるのではないかと思われる。

・口をクチャクチャ(機嫌のいいときのチャタリングとは違う)
・食べられない
・涎が出る(相当重傷)
・急に痛くなる


切歯の不正咬合の治療

・切歯の切断

切歯の形状と伸びるスピードに応じて2-6週間間隔、普通3週間で処置。ダイヤモンドディスクで研磨。
基本的に麻酔なし。3回目位まで抵抗が大きいが、その後はおとなしくなる傾向にある。

・切歯の矯正

生後4ヶ月位6-7ヶ月が限度、上の歯と下の歯が揃っている程度(下の歯が前に出る前)の軽症であれば、矯正が効く場合もある。しかし、繰り返しの処置が必要。
上の歯は辰圧により内側に曲がりやすく、下の歯は舌圧により外側に伸びやすい。カットすることにより、徐々に矯正する。

最悪の場合、抜糸することもある。過長症で歯髄も伸びる子もあり、適正な長さにカットするのは、歯髄を刺激することになりかわいそうなため。

.臼歯過長症の治療

・臼歯の切断・研磨 (原則全身麻酔)

・舌や頬の傷と炎症の治療 (傷や炎症は、原則自然治癒。化膿している場合は治療)

・いつ治療するのがよいか?

なるべくなら痛くなる前にというのが、飼い主の人情だが、痛くなる間隔は不定期なので、痛くなってから処置が原則。麻酔はなるべく間隔をあけたいため。

・全身麻酔をしない方がよいケースは?

尖っている歯が手前だけなら、麻酔なしで出来る場合がある。腎臓や肝臓が悪いとか、あまりに高齢、などで麻酔をかけたくない場合もある。しかし麻酔なしでは、出血してしまった場合、止血処置ができない。

その他の臼歯異常の治療

・歯周病の治療

流涙症(上の臼歯の根っこが炎症を起こしたり、位置がずれたりして起こす。うさぎは油性の涙が多い。鼻涙管洗浄をする)

・動揺歯の治療(歯周病の末期症状)

・歯根膿瘍の治療 上顎、下顎、眼窩

臼歯異常には様々なバリエーションがある。歯自体は研磨できるが、涙目や膿瘍は9割が治癒できず、直っても再発しやすい。ほとんど直らないというのが現実。


長文おつかれさまです。しかし、ここからが「本題」です。


切歯異常の予防

・原因
ケージを噛む癖、顔面の強打

パニックになり、壁に顔面激突、飛び降りて顔面を打つ等。グラグラしているうちに、不正咬合で固定してしまいがち。

先天異常(まれ)

ケージを噛むと出してもらえると学習してしまった子は、ケージを新調して習慣をリセット、しつけのやり直しをするのも効果がある。吸水ボトルをかじり続けて、不正咬合になった子もいた。

・事故を起こさない注意(パニックを起こさないように)
・先天異常を少なくするには(ブリーダーは異常のある子を繁殖させない)

切歯の不正咬合防止に囓り木が必要というのは迷信と思ってよい。

臼歯異常の予防

・先天異常(まれ)

・小型品種は素因あり  小型で丸顔(横顔の鼻と目の距離が短い)は、なりやすい。

・食餌の注意

乾草を充分食べる。顎をどれだけしっかり動かしてものを食べているかが大切。
固すぎるフードは避ける。歯に負担がかかるため、ペレットは小粒のソフトタイプがおすすめ。
柔らかい野菜は、少ししか歯を動かさないので、おやつ程度にした方がよい。乾草は、体重1kgあたりに、一日15gが目安(体重の1.5%)。乾草をたっぷり摂取しているかどうかは、糞を見れば一目瞭然。丸々とした、いかにも健康そうな糞をたっぷりする。


統計

臼歯過長うさぎの乾草摂取量

食べない.......51.4%
0.5%未満.....22.9%
0.5-1%........11.4%
1-1.5%.......11.4%
不明...............2.9%

臼歯正常うさぎの乾草摂取量

食べない......13.1%
0.5%未満.....19.7%
0.5-1%.........37.7%
1-1.5%.......18.0%
2%以上...........1.6%
不明...............4.9%

臼歯不正咬合の初発年齢は、1才が40%を越え、一番多い。ついで4才が15%以上あり、第2のピーク。1才は子供の頃の食生活のツケが現れ、4才は中年期になったためと思われる。

以上のことからから解るとおり、乾草を食べているから、臼歯の不正咬合にならないという保証はない。また、乾草を食べなければ、不正咬合になるというわけでもない。しかし、なってしまったあとでも、再発の予防、抑制になる。

うさぎ本来のサイズは、4kgくらいと思われ、そのサイズの子が丈夫である。乾草をろくに食べなくても、正常なうさぎの多くは、小型種ではないようだ。



前歯は飼い主にもチェック可能
小型丸顔牧草嫌いと、三拍子揃ったP-2は、1才と4才の峠も越し、いまだ正常な状態を保っています。これは奇跡的かもしれません。素因が多い分、より一層注意しなくてはと、あらためて感じました。

歯の病気は治療より予防!
病気になってからでも、再発予防が大切。

と、先生はおっしゃています。臼歯不正咬合の予防は、一にも二にも乾草のようです。ただ、斉藤先生のおっしゃる本来のサイズは4kgだから、ほとんどみな、小型種の範疇に入ってしまいます。

だから、特にP-2はがんばろうという風に理解しました。すでに4年半、牧草キャンペーン開催中ですが、これは一生ものですね。みんなで大きな●目指しましょう。ぴーつーは特にね(笑)


さらに詳しく知りたい方は、こちらがおすすめです。 → ミルのカルテ1 臼歯の異常
ミルちゃん臼歯異常に対するラン子さんの取り組みが、具体的かつ詳しく記述されています。

めったに参加できず、今回が2回目です。
前回参加の報告ページもぜひご覧ください。→尿検査からわかること(おしっこを観察しよう)

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